人の張り詰めたものに、触れられる人でありたい。

query_builder 2026/08/13
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人の張り詰めたものに、触れられる人でありたい。

私がマッサージの世界に興味を持った、最初のきっかけ。

それは、昔テレビで見た、ひとりのエステティシャンの施術でした。

フランスのエステティシャン。

確か、名前はローズさんだったと思います。

女優さんがローズさんを訪ねていき、オイルのボディマッサージを受ける。

そして、施術が終わったあと。

その女優さんの目から、涙が溢れていました。

何か悲しいことがあったわけでもない。
悲しい話を聞いたわけでもない。

ただ、身体に触れてもらった。

それなのに、涙が溢れている。

その光景が、なぜか私の中に強く残りました。

「人の身体に触れることで、こんなことが起こるんだ」

それが、私の原点だったのかもしれません。

⸻

人は、生きていく中で、
たくさんのものを抱えています。

頑張らなければいけない。
ちゃんとしなければいけない。
人に迷惑をかけてはいけない。
自分より誰かを優先しなければいけない。

本当は嫌だと思っていても、
違和感があっても、
言いたいことがあっても、

「まあ、いいか」と蓋をする。

そうやって、自分を後回しにしながら生きることは、きっと誰にでもあることだと思います。

私自身も、そうでした。

もちろん、自分は幸せだと思っています。

でも、人はひとりでは生きていけないから、
人と関わる中で、我慢したり、合わせたり、
頑張ったりする。

そうしているうちに、
気づかないところで身体も心も
少しずつ緊張していく。

まるで、ずっとピンと張った糸のように。

⸻

だから私は、

そんな人の「張り詰めたもの」に触れられる人になりたい。

と思うのです。

筋肉を緩めるだけではなく。

身体を整えるだけでもなく。

その人が、
ほんの少しの時間でも

「もう頑張らなくていい」

と思えるような時間をつくりたい。

委ねても大丈夫。
力を抜いても大丈夫。
何もしなくても大丈夫。

そんな安心を、
手から伝えられる人になりたい。

それが、私がずっと「触れ方」にこだわってきた理由なのだと思います。

⸻

そして今、私は思います。

私自身がそういうセラピストになりたいだけではない。

そんなセラピストを育てたい。

技術や知識を身につけることだけが、
上手なセラピストになることではありません。

どんな気持ちで触れるのか。

どんな身体の使い方で触れるのか。

どんな「在り方」で、その人の前に立つのか。

そこに、その人の手は現れる。

人は、
安心できる手に緩むのではなく、

安心できる人に緩む。

だから私は、
手技や知識だけを教える学校にはしたくない。

その人の身体に触れたとき、
その人が「もう頑張らなくてもいい」と感じられる。

そんなセラピストを育てたい。

昔、テレビ越しに見た、
ひとりの女性の涙。

あの日、私の心に触れたものを、
私は23年経った今も追いかけているのかもしれません。

そして今度は、

私の手で。

そして、

私が育てるセラピストの手で。

誰かの張り詰めたものに、
そっと触れられる人を増やしていきたい。

それが、私がこの仕事を続けている理由なのだと思います。


KAORI

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