頑張るほど、施術は下手になる。「楽をつくる技術」の本当の意味
マッサージの技術を磨くというと、皆さんは何を思い浮かべるでしょうか。
もっと深く押せるようになること。
もっと複雑な手技を覚えること。
もっと強い圧をかけられるようになること。
もちろん、それらも技術の一部かもしれません。
けれど、私が23年間スウェディッシュマッサージを教えてきて、今も大切にしていることがあります。
それは、施術者が頑張れば頑張るほど、良い施術になるわけではないということです。
むしろ、一生懸命になればなるほど、施術の質が下がってしまうことさえあります。
少し意外に感じるかもしれません。
一生懸命やることは、実は簡単。
セラピストは、目の前のお客様の身体を少しでも楽にしてあげたいと思います。
だから、つい頑張ってしまう。
もっと圧を入れよう。
もっと丁寧に揉もう。
もっとしっかり緩めよう。
その気持ちは決して悪いものではありません。
ただ、頑張るということは、身体に力を加えることで比較的簡単に表現できてしまいます。
一方で、余計な力を抜くことは簡単ではありません。
力を入れるのではなく、力みを手放す。
自分の力で何とかしようとするのではなく、身体の重さを利用する。
相手を変えようとするのではなく、相手の身体の反応を感じ取る。
これは、実はとても高度な技術です。
何もしないことと、余計なことをしないことは違います。
そこには、身体の使い方、重心、姿勢、手の密着、圧の方向、リズム、そして相手の身体を感じ取る感覚が必要になります。
施術者が楽になると、なぜ受け手の身体も緩むのか。
スウェディッシュマッサージでは、施術者自身の余計な力みをできるだけ取り除いていきます。
腕だけで押すのではなく、身体全体の重さを手に伝える。
手だけで何とかしようとせず、身体の動きと手の動きを一致させる。
そして、相手の身体に抵抗をつくらない触れ方を探していきます。
施術者が力んでいると、手の圧や動きにも余計な緊張が生まれやすくなります。
受け手の身体も、その圧に対して無意識に身構えてしまうことがあります。
反対に、施術者の身体が安定し、手に余計な力が入っていなければ、受け手は安心して身体を預けやすくなります。
人の身体は、安心できる環境の中でこそ、自然に緊張を手放していきます。
つまり、施術者が楽をするということは、単に自分が疲れないためだけではないのです。
受け手が余計な抵抗をせず、身体を委ねられる環境をつくることにもつながっています。
頑張る施術は、セラピスト自身を疲弊させる。
施術者が毎回、腕や肩に力を入れて頑張っていたらどうなるでしょうか。
当然、身体は疲れていきます。
一人のお客様に全力を注ぎ、二人目、三人目と施術するうちに、集中力も感覚も少しずつ低下していく。
そして、数をこなせない。
身体がもたない。
仕事を続けることが苦しくなる。
これは技術の問題であると同時に、身体の使い方の問題でもあります。
本来、技術を磨くということは、自分の身体を酷使する方向に進むことではないはずです。
少ないエネルギーで、必要なことを的確に行う。
自分自身の身体に無理をさせず、何人のお客様に対しても、質の高い施術を提供できること。
それもまた、プロとして大切な技術だと私は考えています。
技術は、足し算だけではない。
学び始めた頃は、どうしても何かを身につけようとします。
新しい手技を覚えたり、圧の入れ方を工夫したり、できることを増やそうとします。
けれど、ある段階から技術は足し算だけではなくなっていきます。
余計な力を削ぎ落とす。
無駄な動きをなくす。
必要以上に触ろうとしない。
相手を変えようとする気持ちを手放す。
そうして残ったものの中に、その人本来の技術が見えてくることがあります。
これはスウェディッシュマッサージに限った話ではありません。
どのような技術であっても、熟練するほど無駄がなくなり、必要な力や動きが洗練されていくということはあると思います。
私が伝えたい「楽をつくる技術」。
23年間、スウェディッシュマッサージを教えてきました。
それでも、毎年、毎回、新しい発見があります。
同じ手技を教えていても、生徒さんによって身体の使い方も、力みの癖も、感じ取る感覚も違います。
だからこそ、ただ手順を教えるだけでは、本当の技術は伝わりません。
どこに力が入っているのか。
なぜ相手の身体が緊張するのか。
どうすれば自分の身体を楽に使えるのか。
どうすれば相手が安心して身体を委ねられるのか。
その一つひとつを一緒に探っていきます。
私がEAOで伝えたいのは、頑張って何かをするセラピストではありません。
自分自身が無理なく、自然体でいながら、相手の身体に深く寄り添えるセラピストです。
頑張る技術から、委ねる技術へ。
力を加える技術から、力みを手放す技術へ。
そして、施術者自身が楽であることが、お客様にとっての心地よさにもつながっていきます。
私は、この「楽をつくる技術」こそ、これからも大切に伝えていきたいと思っています。
KAORI
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